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 第7回アジア太平洋ろう者競技大会 SEOUL2012(柔道競技)

報告者:江上忠孝

1.大会内容

日  程 2012年5月26日(土)〜31日(木)
派遣先名 韓国 ソウル市内
会   場 Jamasil High School
参 加 数 7ヵ国(男子22名)

2.選手団名簿

団 長 宮下 昭宣 (日本ろう者武道連合)
コーチ 江上 忠孝 (九州電力株式会社)
スタッフ 大槻 由香理(日本ろう者武道連合)
100kg級 山田 光穂 (会社員) 2 位
90kg級     ―
81kg級 宮下 真弥 (会社員) 2 位
73kg級 木ノ下 寿 (会社員) 優 勝
66kg級 東岸 林太郎(会社員) 3 位
60kg級 吉良 暁生 (会社員) 優 勝

3.大会結果

100kg級 山田 光穂(会社員) 2位

  1回戦 2回戦
国 名 イラン 韓国
決り技 技有負(払い腰) 一本勝(内股)

81kg級 宮下 真弥 (会社員)2位

  1回戦 2回戦
国 名 イラン 韓国
決り技 有効負(背負投) 一本勝(背負投)

73kg級 木ノ下 寿(会社員)優勝

  1回戦 2回戦
国 名 イラン 韓国
決り技 一本勝(背負投) 一本勝(背負投)

66kg級 東岸 林太郎(会社員)3位

  1回戦 2回戦 3回戦
国 名 イラン 韓国 キルギスタン
決り技 技有負(掬投)
有効負(背負投) 一本勝(大内刈)

60kg級 吉良 暁生(社会人)優勝

  1回戦 2回戦 3回戦
国 名 イラン 香港 韓国
決り技 一本勝(背負投) 一本勝(巴投) 一本勝(背負投)

4.開会式

5.その他

6.総評

 平成24年5月26日〜31日の6日間、韓国ソウル市内で開催された第7回アジア太平洋ろう者競技大会 SEOUL2012(柔道競技)は、日本、イラン、韓国の3ヶ国で金メダルを分け合う結果となった。日本チームは、1日目に副主将の吉良選手と若手の新鋭木ノ下選手の二人が金メダルを獲得し、東岸選手も膝を痛めながらも粘りの柔道で見事3位入賞を果たした。
 2日目は前回のデフリンピック100s級の覇者であり、日本チームの主将の山田選手が
登場、イランの長身190p以上ある新鋭の選手に技有を取られ敗れる波乱もあったが、さすがはベテラン気持ちを切り替えて挑んだ2回戦は持ち前の技の切れを見せて、電光石火の左内股で一本勝ちを見せて2位入賞を果たした。また、国際大会初出場のホープ宮下選手も韓国の選手に敗れたが、持ち味である変則柔道を見せてイラン選手に競り勝ち見事2位入賞を果たした。
 総括すると、日本チームは金メダル2個、銀メダル2個、銅メダル1個の出場した選手全員が入賞した。

  今回、この5名の選手たちの成果は、必ず次の世界大会優勝への大きな布石となったに違いない。健常者も障害者も向かう目的は一緒だ。日本の代表として世界の代表者とひとつしかない栄光のメダルを目指している。
木ノ下選手は、試合後、私に印象深い話をしてくれた。それは、彼にとって今回の金メダル
は、これまで障害者として生まれた自分を一番身近で支えてくれた母に対する感謝のメッセージだった。

 ろう者スポーツは、パラリンピックスポーツと比較すると、まだまだ認知度が低い。今回のアジア大会の結果すら一般紙で掲載されていなかった。報道関係者へのアピールが足りないのか、もしくは世間の関心度が低いのか。障害者スポーツも健常者と同じように報道してほしい。報道の自由の前に、報道は平等であってほしい。そして、選手たちの「生きるさま」を応援してほしいと思う。

 数年前までは、鹿児島県のろう学校に柔道部があったが、指導者が転勤などでいなくなり廃部となっている。日本ろう者武道連合に登録する柔道選手も年々減少し、現在では10数名程度である。この内、今回のアジア大会に出場した山田、吉良選手は30歳となる。今後のろう者柔道人口の裾野を広げるために何が必要なのかを関係者は考えるべきである。また、付け加えて本大会の日本代表のユニフォームや日の丸柔道着、大会中の食事代などは、すべて選手が個人負担している状況であり、その経済的負担も見逃せない課題である。

 最後に、ろう者選手たちは「柔道」に限らず、すべてのスポーツを通じて世界中の人たちと手話で交流することができる。健常者の日本代表が1回の国際大会でどれほどの国際交流・親善ができるのだろうか。
 次回、世界大会でも多くの「ろう者選手」たちが国際交流を重ね、互いの国の文化や歴史を理解し、多くの「友情」や「愛(思いやりの心)」を育むだろう。