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 日本ろう者武道連合柔道強化合宿(沖縄県)レポート
  1. 開催期間  平成23年11月25日(金)〜27日(日)の3日間
  2. 開催場所  沖縄県(那覇西高校、比嘉道場)
  3. 主   催  日本ろう者武道連合
  4. 参 加 者

    【指導者】
     中田 善久(六段) 全柔連、セコム株式会社
     江上 忠孝(五段) 九州電力株式会社 柔道部監督代行
    【日本ろう者武道連合】
     会 長  宮下 昭宣
     選 手  山田 光穂  (五段)  吉良 暁生  (三段)
            宮下 真弥 (初段)  東岸 林太郎 (三段)
            木ノ下 寿  (弐段)  柴崎 尚樹  (初段)
     事務局  坂口 健二、柴崎 由美子、大槻 ゆかり   ・・・敬称略

  5. 内  容
  6. ■ 平成23年11月25日(金)

    【山田主将と吉良副主将との出会い】
     沖縄空港21:15、到着ゲートで携帯を
    チェックしていると、一際大きな体をした
    若者が立ち止まり、私の顔を見て深々と一礼した。この礼儀正しい男が山田光穂(30歳)だった。前回のデフリンピック金メダリストである。
     山田選手は私の口の動きを見て、何をしゃべっているのかをだいたい理解している。私は8人乗りのワゴン車に乗り込み、ホテルに向かう車中、山田選手の電子ボード(東急ハンズ販売)を使いコミュニケーションを重ねた。
     運転手は学校の先生で吉良副主将だった。吉良選手は山田選手と同様に日本ろう者武道連合の柔道強化選手を支える中心選手の一人だ。
     しかし、柔道という共通点だけで気持ちが通じ合えるのは、柔道家の特権だと思う。初めて会ったと思えないほど、口の動きと電子ボードを使って、身振り手振りで互いの意思を伝え合った。この車中のやり取りで選手たちの柔道に取り組む「姿勢」を認識できた。

    【練習スケジュール】
     25日(金)23時に中田先生が到着し、宮下会長との挨拶、柴崎選手とお母さんとの再会(群馬練成大会以来)など一通りの挨拶を終え、ホテルロビーで山田選手、吉良選手たちと夜遅くまで意見交換を行い、明日からのスケジュールについて確認した。
     26日(土)は、午前中は那覇西高校柔道部、午後から比嘉道場で合同練習会を行うこととした。
     選手たちは既に24日(木)から2日間、沖縄尚学高校で練習しているので、疲労も蓄積されている様子。

    【地元新聞に掲載】
     26日(土)地元新聞に、先日の沖縄尚学高校での練習風景が記事として掲載された。その記事を一部紹介すると、「琉球新報19面:柔道、デフリンピック代表ら世界へ向け沖縄で調整」、「沖縄タイムス17面:ろう者武道、県内合宿。世界目指す柔道・空手強化選手10人」などメディアに取り上げられ、選手自身もモチベーションUPや世界戦に向けた新たな決意となったようだ。
     沖縄県の地元メディアの皆さん、ろう者柔道選手の強化合宿を取り上げていただきありがとうございます。今後も選手たちの夢に挑戦する姿をスクープお願いします。必ず、全国みなさんに生きる勇気と感動を伝えることができると思います。

    【世界への挑戦】
     聴覚障がい者の世界大会「デフリンピック」が4年に1度、開催される。
     日本ろう者武道連合に所属する選手たちは、このデフリンピック大会に出場することと同大会での金メダルを目指し、毎日練習に励んでいる。
     日本代表となるためには、来年5月に韓国で開催される「アジア太平洋ろう者スポーツ大会」、同8月にベネズエラで開催される「世界ろう者武道選手権大会」での上位進出が選考条件となる。
     今回の合宿は2年後のデフリンピックに向けた強化が目的だ。

    【那覇西高校での合同練習】
     同校は当社柔道部員の「七戸龍(全日本シニア強化選手)」の出身校である。選手たちは高校生と激しい練習を行った。特に東岸選手は最後まで自分を追い込み、いい汗をかいていた。彼は左の一本背負いが得意技で、私が少しアドバイスをすると、すぐに軌道修正し自分より大きい高校生を投げ飛ばしていました。健常者ではありえないほどの、のみ込みの早さに驚きました。
     最年少の柴崎選手も同世代の高校生と精力的に取り組み、内容の濃い練習を行いました。また、山田選手も古傷の肘を痛めながらも、最後まで集中力を保ち、主将としての役割を果たしました。

    【比嘉道場での合同練習会・ウェルカムパーティー】
     比嘉道場では、小・中・高学生約30名が練習に参加し、基本練習を中心にろう者柔道選手たちとの交流会&練習会を楽しんだ。
     練習では子供たちが「手話」で自己紹介し、ろう者柔道選手も手話で答え、乱取、打込み、投げ込みなど約2時間汗を流した。
     驚いたのが練習最後に小学5年生女子「きらり選手」が手話で心のこもったお礼を行い、見ている私たちを含め全員が感動した。

     また、練習終了後、比嘉道場主催のウェルカムパーティーでは、比嘉ファミリー、その他の先生方、保護者会の皆さんで温かいおもてなしを準備していただきました。パーティーの終盤には子供たちから手話で歌をプレゼントしていただくなど、心のこもった企画を考えていただき、一生忘れることのできない1日となりました。

    【総括】
      沖縄県柔道関係者みなさまのお陰で、ろう者武道連合の柔道強化合宿(沖縄)を無事に終えることができました。これも一重に比嘉先生を始め沖縄県柔道連盟の諸先生方及び保護者会の皆様方のお陰だと感謝しています。
     また、ろう者武道連合の選手たちは2013年デフリンピックに向けて、今後、更なる強化が必要となります。年明けから全日本強化Jr合宿に参加する予定となっており、今後の飛躍が期待されるところです。
     健常者以上にポジティブで真摯に柔道に取り組む、ろう者選手たちの今後から目が離せない。

九州電力株式会社 柔道部監督代行 江上忠孝