イベント



 ラオスへの柔道指導派遣に参加して
トゥクトゥク
時 期  平成21年7月15日(水)〜22日(水)
派遣場所 ラオス人民民主共和国
参加者  桑原 和寿(人事労務部社員研修所教育運営G)


派遣経緯
 西日本実業柔道連盟が主要事業のひとつと考える、「近隣国の柔道普及拡大を目的とする国際交流と、国際感覚を身につけた柔道指導者の育成を継続して行うこと」を目的として派遣要請がありました。
派遣メンバー紹介
団 長: 大橋武彦(ミユキ代表 当連盟副理事長 7段 71歳) 
副団長: 瀬戸口正征(元大阪ガス 当連盟事務局長 6段 64歳)
指導員:



中山幸久(大阪ガス 2段 33歳)
磯  恵司(東レ滋賀 3段 27歳)
鳥入孝仁(近畿通関 3段 27歳)
桑原和寿(九州電力 4段 31歳)
ラオス派遣メンバー
 派遣団のリーダーとして引っ張っていただいた大橋団長をはじめ、私達の身の回りのお世話をしていただいた瀬戸口副団長、そして、共にラオスの選手達にひとつでも多くの技術を伝えたいと指導にあたった指導員の方々、みなさん非常に温かい方ばかりで、この遠征がとても楽しく充実したものになったのは、みなさまのおかげだと深く感謝しています。
ラオス指導者紹介
菊池正敏先生(九州大学柔道部OB 6段)
 元間組社員としてネパール、シンガポール勤務の経験があり、同社を早期退職後、ラオスでJICAのシニアボランティアとして柔道の普及発展にご尽力されている。
 滞在中、常に私達のお世話をしていただき、飲食店や観光地の案内、ショッピング等にもお付き合いいただきました。
いろいろな経験をさせていただき、「感謝」の言葉に尽きます。
馬場あゆみ先生(広島大学柔道部出身)
 皇后杯にも出場経験がある実力者。滞在中は都合により1日半程度しかご一緒できませんでしたが、今後のラオスでの柔道指導に期待しています。
柔道指導時に必要と思われるラオ語を教えていただきました。(大変役立ちました)
練習スケジュール及び指導内容
 〔練習スケジュール〕
午  前  (9:30〜12:00)
午  後  (16:30〜19:00)
7月17日(金) ・ウォーミングアップ(体操、補強運動等)
・打ち込み、移動打ち込み
・寝技(3分×10本)
・立技(4分×10本)
・試合形式
・投げ込み
・形の練習
・体操
・ウォーミングアップ(体操、補強運動等)
・技の指導(桑原指導員)
※大外刈(基本編)
・立技(5分×8本)
・技の指導(桑原指導員)
※大外刈(応用編)
・試合形式
・投げ込み
・形の練習
・体操
7月18日(土) ・ウォーミングアップ(体操、補強運動等)
・技の指導(中山指導員)
※寝技(三角、関節技等)
・寝技(3分×10本)
・試合形式
・投げ込み
・形の練習
・体操
・ウォーミングアップ(体操、補強運動等)
・技の指導(磯指導員)
※一本背負を中心とした基本・応用編
・立技(5分×6本)
・試合形式
・投げ込み
・形の練習
・体操
7月19日(日) ・ウォーミングアップ(体操、補強運動等)
・技の指導(鳥入指導員)
※背負投を中心とした基本・応用編
・立技(5分×6本)
・試合形式
・投げ込み
・形の練習
・体操
休     み
7月20日(月) ・ウォーミングアップ(体操、補強運動等)
・技の指導(全指導員)
※足払い、組み手を個別指導
・立技(5分×6本)
・技の指導(全指導員)
※階級別で個別指導
・試合形式
・投げ込み
・形の練習
・体操
・ウォーミングアップ(体操、補強運動等)
・打ち込み、三人打ち込み
・技の研究、指導(全指導員)
※技の攻防に対する対処法等
・試合形式
・投げ込み
・形の練習
・体操

 〔指導内容〕
・桑原指導員(九州電力) 桑原指導
 私は、大外刈を中心に指導しました。基本的な大外刈及びけんか四つの相手に対する変形の大外刈を伝授しました。特に、重量級の選手達は、熱心に聴いてくれ、個別指導等も行いました。
・中山指導員(大阪ガス) 中山指導
 寝技を中心に指導し、数種類の三角や関節技を伝授。ラオスの選手達は、どちらかというと派手な技を好んでいたため、基本動作を中心にしっかりと指導。派手な技も基本がしっかりしていないと決まらないことを理解させていました。
・磯指導員(東レ滋賀) 磯指導
 一本背負を中心にいろいろな技への展開を指導。一本背負から大内刈、一本背負から小内巻き込み等への連係を熱心に教えていました。前後の技を連係させることによって、より効果的に技が決まることを理解させていました。
・鳥入指導員(近畿通関) 鳥入指導
 背負投及び足技を中心に指導。基本的な背負投、背負投のフェイントから小内刈、奥襟を持たれた時の背負投等、バリエーションに富んだ技を教えていました。さすが軽量級という感じで、軽量級及び女性の選手達から大人気でした。
・階級別に個別指導(指導員全員) ラオス派遣メンバー(指導員)
 指導最終日は、初日からの指導の復習及び階級別に分かれての個別指導を行いました。選手達は、それぞれの階級や体系に応じた技を個別に質問し、この指導員のこの技を教えてほしい等、積極的かつ貪欲に取り組んでいました。
 それぞれの指導員が基本の大切さを理解させるとともに、地道な努力が成果を生み出すことを身をもって感じさせ、一生懸命指導にあたりました。

訪問記
〔ラオス入国〕
 7月16日(木)11:45に関西国際空港を発ち、タイ:バンコク国際空港を経由(待ち時間4時間余り)して、ラオス:ビエンチャン国際空港に21:00着(現地時間)。日本との時差は2時間。やっと着いたかと思ったら猛烈なスコールに見舞われました。ホテルまでは車(トラック型)で移動しましたが、豪雨の中、荷物は荷台に乗せることしかできず・・・嫌な予感は的中。スーツケースの中は水浸しでした。おかげで、ホテルの部屋の中はいきなり洗濯物だらけ。この先大丈夫かな?と思わせるほどでした。ラオスの季節はちょうど雨季。日本の梅雨をさらに暑く、ジメジメさせた感じでした。
〔練習環境〕
 練習場所は、国立競技場内の柔道場でしたが、日本のイメージとはほど遠く、倉庫のような建物の中に板で一段高くし、その上に98畳の畳を敷いている状況でした。もちろん冷暖房設備などなく、雨漏り当たり前・・・。雨の日は、畳を拭きながらの練習でした。しかし、このような設備の中でも一生懸命頑張っている選手達がいるということを考えると、私達は何と恵まれた環境で柔道ができているのだろうと改めて感じさせられました。
〔練習状況〕
 ラオスの選手達は、今年12月に地元ラオスで開催されるSEA GAMES(東南アジアのオリンピック)に向けて熱心に稽古に取り組んでいました。今回は直後にタイの国際大会等を控えていたため、激しい乱取りというよりも、各指導員が指導した技を中心に研究や反復練習、そしてその技を乱取りの中で試してみるという感じで練習を行いました。中には、この先非常に有望な人材もいましたので、今後の国際大会にも注目したいと思いました。初日と最終日は、派遣メンバー(指導員4名)による基立ちも行いましたが、慣れない蒸し暑さにヘロヘロでした。 練習風景
 指導の際は、派遣が決まった当初から懸念していた言葉の壁というものがありましたので、最初は通訳の方に日本語を英語に訳していただき、さらに英語をラオス語に通訳して伝えるという方法をとっていました。しかし、慣れていくうちに簡単な英語や片言のラオス語、そして何よりボディランゲージでなんとかなることがわ
かり、JUDOに対する熱い想いさえあれば相通ずるものと確信できました。これこそが、心と心の通じ合いなんだなと改めて実感することができました。
  また、ラオスの選手達は必ず練習の最後に「形」の練習を行っていました。さすが数々の形選手権で良い結果を収めているだけあって、とても素晴らしかったです。恥ずかしながら、あんなに素晴らしい形は、私には絶対できません。逆に教えてほしいぐらいです。
形の練習
プレゼント  練習後、ラオスの選手達にお土産や各企業のノベルティー等をプレゼントしました。たいした物ではありませんでしたが、些細な物でもとても喜んでくれ、今の日本では見られないような光景や素朴な可愛さに触れることができ、改めて文化の違いを認識させられました。
〔食事〕
 ホテルの朝食は、パン、コーヒー、フルーツ程度。少し物足りなさがありましたが、さすが東南アジア、フルーツは最高に美味しかったです。また、パンはフランス統治が残した文化のひとつということで、こちらも非常に美味しかったです。それから、おかゆも食べに連れて行ってもらいました。
朝食おかゆ
 午前中の練習後、昼食前に必ず案内していただいたのが、ジュース屋さん。練習後の乾いた喉を潤してくれたのは、南国フルーツ100%ジュース。日本では500円程すると思いますが、ラオスでは50〜100円程度。このひと時は、最高でした。
100%ジュース
 昼食は、現地のいろいろな料理を堪能させていただきました・・・が、現地料理に必ずと言っていいほど入っている香草(パクチー)が私を悩ませてくれました。この独特の香りは、生涯忘れることがないでしょう。 香草たっぷりラオス流ラーメン
 ランチのフルコースもいただきましたが、私にとっては、香草のフルコースとしか思えず、必死に香草を取り除きながら食べていました。周りを見渡すと、他の指導員も同じ状況で、みんな苦笑い?でした。 コース料理@コース料理A
 夕食はといいますと、現地の料理は昼食に引続き香草たっぷりでしたが、中華料理店等にも案内していただき、大変満足させていただきました。そして、「夜」と言えばお酒。地元のビールは非常に美味しく、毎晩みんなをいい気持ちにさせてくれました。しかし、地元の焼酎は非常にキツく、アルコール度数を見てみると、なんと50度。これにはビックリさせられました。
 香草は受け入れることができなかったものの、大変美味しい料理、お酒を堪能することができました。
ラオス最後の夜
〔ビックリ〕
 今回の遠征でビックリしたことは・・・たくさんありますが、限りがありますので、いくつか紹介します。まず、信号無視の多さ。一応信号機はありますが、ほとんどの車両が無視。隣に乗っていて常に冷や汗ものでした。
 次に、バイクの多さと運転手の年齢層。バイクが非常に目立ち、2人乗り、3人乗りは当たり前で、ほとんどの人がノーヘル。乗っているのはと言いますと、どう見ても小中学生ぐらいにしか見えない子供達が大勢。何故捕まらないのだろう?と思うくらいでしたが、肝心な警察官をほとんど見ませんでした。(笑)
 それから、野良犬の多さ。ラオス入りした日にいきなり「狂犬病の予防接種はしてきましたか?」と聞かれ、そんなものは誰一人してきてない状況。その次に出てきた言葉は、「じゃ、気をつけてください。噛まれたら24時間以内にワクチンを打たないと死にます。引っかかれても同様です。」これには、ビックリというよりビビリました。それからというもの、野良犬を見るたびに後退り。練習への往復も恐ろしい道のりでした。
〔感動〕
 帰国する日の朝食時、ラオスでの朝食もこれが最後かと物思いふけていると、ラオスの選手たちが、水餃子の差し入れをしてくれました。恐らく、最後のお別れにと気をつかってくれたのだと思いますが、自分達の小遣い
もままならないと思われる中で、そのようなことをしてくれた彼等に対しとても感動しました。本当に心の優しい子供達でした。
 また、ラオスを出発する際も、ビエンチャン空港まで10名ほど見送りに来てくれました。これには本当に驚きました。合宿場所からはかなり離れていたと思いますが、私達のためにわざわざ見送りにまできてくれ、名残惜しい気持ちでいっぱいでした。本当にありがたく思いました。
空港にて

【今回の遠征を振り返って】

 派遣が決定した当初は、期待と不安が混在し、非常に複雑な心境でしたが、実際にラオスへ行ってみると、現地で指導をされている菊池先生をはじめ、選手の方々も非常に熱心に柔道に取り組んであり、いつの間にか不安という2文字はなくなっていました。
 言葉が通じない中で、どれだけ指導ができるだろうかという思いはあったものの、片言の英語やラオ語及びジェスチャーでなんとか指導することができ、伝えたいという強い気持ちがあれば、言葉の隔たりは関係なく、気持ちで分かり合えると改めて感じました。そして、何より私達が指導したことに対し、選手達が一生懸命取り組み、ひとつでも多くの技術を得ようとしている姿を見て、非常に感銘を受けました。また、指導を行う中で、ラオスの選手達から学び得ることもたくさんあり、私にとって非常に収穫が多かった遠征となりました。
 いつの日か、今回指導した子供達の中から世界選手権やオリンピックのメダリストが輩出されることを願っています。
 約1週間という短い期間ではありましたが、団長の大橋先生をはじめ、今回同行した他企業の指導員の方々にも恵まれ、大変実りあるものになりました。是非、今後もこのような事業を継続していただき、柔道界の底辺を益々広げていってほしいと強く願います。
 最後になりますが、今回、このような機会を与えていただきました西日本実業柔道連盟及び快く同意していただいた会社の方々のご理解に深く感謝するとともに、今後の柔道人生の糧として柔道界に貢献したいと思います。
 大変貴重な経験をさせていただき、本当にありがとうございました。
記念撮影